日本の環境産業の海外進出を支援するプロジェクトへの参画

日本企業の成長性ある海外市場への進出の必要性は、多方面で論じられているが、とりわけ、環境分野でも、日本独自の技術システムをいかにして海外へ展開するかが、今後の課題とされていた。
今年度の環境省事業において、その支援事業の採択案件7件が確定した。
そのひとつに、弊社が関係しているプロジェクトが採用された。


環境省の事業名は静脈産業の海外展開促進のための実現可能性調査等支援事業」であり、弊社が関係して採択されたプロジェクトは、JFEエンジニアリング?を主幹事として、弊社と住友商事を副幹事とする「マレーシア、クアラルンプール首都圏における都市ごみによる再生可能エネルギー発電プラントの建設、運営及びリサイクル社会形成に向けての提言」を行うものである。
弊社は、この事業のとりまとめ調整役を務めると共に、地域社会に適合したリサイクル等の環境負荷低減システムの提案を行う予定である。
また、これには、様々な日本企業と現地企業とのコラボレーション等の可能性の検討も行いたいと考えている。
他の6案件と共に、大いに今後の可能性を模索する意味でも、重要と思われる。


但し、弊社の案件も含めて、その多くが、大企業をコアとしたプロジェクトである。
環境省としての事業の必要性とその成果を評価することに関して、改めて問われることとなろう。
その場合には、弊社は、自らのプロジェクトの成果だけでなく、本支援事業そのものの意義と成果に関しても宿題を負ったと考えるべきであろう。

同志社大学経済学部の上期講義の半分が終了

同志社大学での講義も先週4回目(8時限分)が終了した。
「環境ビジネスと企業の環境戦略」という講座名での講義で、四回にわたって、次のような内容の講義を行った。


1/ 環境政策全般に関する経緯〜エネルギー政策を含む温暖化、化学物質管理、廃棄物等管理政策
2/ 公害から現在に至る企業と環境との関わり
3/ EPR政策の現状と課題〜容器包装、電気電子製品、廃自動車等〜
4/ Post-EPRの試み〜PSS等の新しい試み〜

次回以降は、エネルギー政策、化学物質政策を含む総合的な企業の環境取り組み(CSR等も考慮)をまとめる予定である。


大学生がどのような点に興味を持って取り組めるのかが、最初、心配であり不安であったが、予想以上に興味を持って取り組んでいるという印象であった。
講義の中では、特に、知識よりも考え方等を重視したつもりである。
坂本賢三さんの「わかること、分けること」を紹介しつつ、どう物事を整理するか、どう説明をするか等にも考慮したつもりである。
これの成果が、一回目の課題レポート提出でわかると思う。


再来週締め切りのこのレポートが楽しみである。

ユージンスミス「智子の入浴」

大学の講義の最初に、環境ビジネスを考える上で最も重要なビジネスの功罪という視点から、公害問題の典型例、これで全てが語れるようなものをと考えた。
かなり悩んだ上で、ユージンスミスの著名な写真である「智子の入浴」を選んだ。



最初に、あの写真を見たのは何年前だろう。
まだ、環境問題に関わる前だったと思う。
水俣病のことを本で読んで関心を持った時に、出会った一枚の絵である。
10代半ばの水俣病の智子さんが母と一緒に入浴している写真である。
まだ若くこれからなのに、自分ひとりで入浴もできない、その子を大切にいつくしみながら入浴させる母親の優しい横顔。
忘れることができない写真であった。


今回、この写真を学生に紹介しようと考えて、いくつかの新しいことが分かった。


まず、最初に、この写真がもうほとんど入手困難になっているということが分かった。
それは、次のようなことらしい、ユージンスミス夫人が、智子の関係者と面談した折、「智子さんの写真は、多くの人たちに水俣病の本質を理解するのに役立ったでしょ。そろそろ家族に返してもらえないか」と相談を受けたことが原因らしい。
そこで夫人は、この写真の著作権を全て御家族にお渡ししたということらしい。
だから、最近出版された水俣病の写真集等にも掲載されていないとのことであった。


もうひとつ、これは、小生が知らなかっただけであるが、大変な衝撃を受ける事実がわかった。
写真家のユージンスミスさんは、既に他界されている。
そのことは知っていたが、その原因が、水俣病の集団交渉を写真撮影しているときに、関係者から暴行を受け、その傷がもとでの死亡であったということ。
しかも、スミスさんは、写真をとることを重視し、大きな騒動にしたくないとの理由から、傷害事件としての訴えを一切しなかったということ。
これはショックであった。
彼の写真がなければ、これほどまでに水俣病の悲劇が世界に知ることとはならなかったであろうことを考えると、非常に感慨深いものがある。

講義録。その1。

4月から始まった同志社大学経済学部での講義も、明日で四回目(各回二時限であるので、8時限)である。
少し、それを紹介してみたい。


講座のタイトルは、「環境ビジネスと企業の環境戦略」であり、経済学部以外の学部生も受講可能となっている。
4月13日の開講時には、全体講義内容を下記のように構想してみた。
おそらく、大学側、学生が期待するのは、現役の環境政策コンサルタントとして実際に、政策立案や事業実施の場面での経験を踏まえたものであろうと考え、経験を踏まえた整理を基本としつつ、極力環境経済学での議論との連動性を考慮しようと考えた。


まず、講義の特徴を次のように設定した。
   理論よりも実践
   知識よりも考え方、思考方法
   過去、現在から未来


すなわち、理論よりも実践は、現役のコンサルタントとしての経験を基にした講演であるので、おのずとそうならざるを得ないし、それを特徴にしようと考えた。
次に、知識習得過多の現在の教育現場の状況を考え、できるだけ、知識を増やす方向よりも、考え方、思考方法も含めた講義にしようと考えた。
さらに、過去の知見や理論を活用することは当然であるが、現在から未来を見据えた視点を重視する方向とした。
そして、経済学のアプリケーションの一つである環境経済政策の実践事例を通じて、企業の取り組みの可能性と限界を把握することを目的として、次のような内容とした。


 1.具体的な実践事例(20年余コンサルティング実績)に基づくケーススタディ(CS)
       実際に行われた政策選択(政府の選択)
       企業取り組みを事例としての分析及び批判(企業、業界の選択)
       民間の非営利セクターの取り組みの分析及び批判
 2.日米欧の政策比較及び国際環境政策の現状と課題
 3.現在の政策課題をベースにした将来の方向性の検討

震災後のエネルギー政策について〜東電の賠償問題から〜

東京電力の賠償に関する政府案が論議を呼んでいる。
ざっと、この問題を考えてみたい。
これを考えることが、今後のエネルギー政策に大きな影響を及ぼすと考えるからである。


まず、現在の東京電力のバランスシート(BS)を見てみると、おおよそ、資産が13.2兆円。
負債は、担保付債務が5.2兆円、担保なし債務が5.5兆円。株主資本は、2.5兆円でバランスしている。
東電がかけている保険が0.1兆円と言われているので、株主資本を加えた2.6兆円を賠償額が超えると東京電力は、債務超過と考えて差し支えない。


すなわち、既に、債務超過状態といえる。


現在、想定される政府案の賠償計画では、銀行等が有する債権は、担保の有無に関わらず補償され、株主資本も免責されるとすると、どうなるのだろうか。
すなわち、10兆円の賠償を想定すると、原子力損害賠償補償契約に基づき国の2011年度予算で2.3兆円が補償され、上記の東電がかけている保険で0.1兆円が賄える以外が、新たな国民負担による賠償額となる。
すなわち、7.6兆円。
東京電力が、倒産し解体されて資産売却されると、担保なし債権を有する金融機関と株主が責任を負うこととなる。
この場合には、ほとんど、新たな国民負担が生じないこととなる。
なぜ、これを政府が選択しないのかの説明がどうしても必要な気がする。


さらに、発展的に考えれば、東電の資産を売却して、かつてより議論のあった、送電と売電の分離によって、9電力独占体制の見直しを行うことは、今後想定される多様な再生可能エネルギーの普及に、必要不可欠のスキームのように思う。
ここまで考えると、やはり、現在の政府による賠償案は、納得できない。

50の手習い。大学講師という仕事

 この四月から、同志社大学経済学部で、講座を持つことになった。
講座のタイトルは、「環境マネジメントと企業の環境戦略」というものを頂戴した。
ちょうど良い機会をいただいたと考え、今まで実践してきたことを整理して、若い学生諸君にお話ししてみようと思い、スタートさせた。
隔週1.5時間*2の講義は、講師にとっても、学生にとっても、双方に負担が大きいものである。


 内容は、経済学部の講義であるので、温暖化対策、化学物質対策、廃棄物対策に関する諸制度と企業の取り組み状況を経済学の視点を重視して整理しながら取りまとめる予定である。
政策と市場との相互影響が中心になるものと思われ、今まで、業務で携わってきた経験を、理論的に取りまとめることとなる。半期分の講義でも、講義時間はトータル24時間に及ぶ。


 4月に二度の講義を行ったが、幸いにして、民間のコンサルタントからみた環境経済政策論は新鮮と見えて、学生諸君から、概ね好評であった。しかし、今後、どうなることやら…