震災後のエネルギー政策について〜東電の賠償問題から〜

東京電力の賠償に関する政府案が論議を呼んでいる。
ざっと、この問題を考えてみたい。
これを考えることが、今後のエネルギー政策に大きな影響を及ぼすと考えるからである。


まず、現在の東京電力のバランスシート(BS)を見てみると、おおよそ、資産が13.2兆円。
負債は、担保付債務が5.2兆円、担保なし債務が5.5兆円。株主資本は、2.5兆円でバランスしている。
東電がかけている保険が0.1兆円と言われているので、株主資本を加えた2.6兆円を賠償額が超えると東京電力は、債務超過と考えて差し支えない。


すなわち、既に、債務超過状態といえる。


現在、想定される政府案の賠償計画では、銀行等が有する債権は、担保の有無に関わらず補償され、株主資本も免責されるとすると、どうなるのだろうか。
すなわち、10兆円の賠償を想定すると、原子力損害賠償補償契約に基づき国の2011年度予算で2.3兆円が補償され、上記の東電がかけている保険で0.1兆円が賄える以外が、新たな国民負担による賠償額となる。
すなわち、7.6兆円。
東京電力が、倒産し解体されて資産売却されると、担保なし債権を有する金融機関と株主が責任を負うこととなる。
この場合には、ほとんど、新たな国民負担が生じないこととなる。
なぜ、これを政府が選択しないのかの説明がどうしても必要な気がする。


さらに、発展的に考えれば、東電の資産を売却して、かつてより議論のあった、送電と売電の分離によって、9電力独占体制の見直しを行うことは、今後想定される多様な再生可能エネルギーの普及に、必要不可欠のスキームのように思う。
ここまで考えると、やはり、現在の政府による賠償案は、納得できない。