原子力発電所の再開問題は大事な一里塚

今回の震災を踏まえて、原子力発電所を巡る方向性は、今後の日本社会の姿を決める重要な要素として位置づけられる。
どうも、政府は、夏場の電力不足を補うために、早急に、休止あるいは点検中の原発を再稼働させたい意向のようである。
しかし、少なくとも、今回の福島第一原発の事故原因に対する分析を踏まえた安全対策、さらに、将来向かっての電力供給のあり方、国民への電力需要に対する考え方を明示しなければいけないのではないだろうか。


事故原因に関しては、多くのマスコミや政府関係者からは、
 1/ 非常用電源の対策として、高台に非常用電源を用意する。
非常用電源に更なるバックアップを用意することによって、サイト内のブラックアウト(電源が全て消失してしまうこと)を回避する対策を行う。
 2/ 津波対策として、新たに防波堤等を用意すること。
この二点を対策として掲げて、対応しようとしていると思われる。


しかし、以下のことについては疑問を呈したい。
A/ 非常用冷却の消失段階の原因として、配管破断が論じられることはほとんどないが、本当にそうなのだろうか。
非常用冷却水の消失は、非常用冷却装置の不作動によって、燃料棒がメルトダウンして云々となっているが、冷却水の消失は配管破断によるのではないのだろうか。
これは、情報がなくて、推測の域を出ないが、もしそうであるならば、耐震設計上の見直しが急務となる。
それも、今でも非常に厳しい耐震設計を行っているものをさらに設計条件を厳しくする必要がある。


さらに、電力の供給問題としては、
B/ 発電と送電の分離をどう考えるのか。
C/ 発電の供給は、全て電力会社に任せて、二酸化炭素の発生が少ない天然ガス等を当面は対応するにしても、中期的な方向性は、菅首相再生可能エネルギー云々と言ったままである。
D/ さらに、電力の需要に対するあり方は、今夏に15%削減を東京電力管内で実施する方向だけは打ち出されているが、それでは、中期的にどうあるべきという議論は何もない。
また、東京電力管内以外でのあり方に対しても何もないに等しい。


これらすべてに対しての方向性が、詳細にわたらなくても総論的に論じられて、初めて原発がどうあるべきかが分かるはずである。
拙速な原発の推進は、百害あって一利なしであり、この震災を千載一遇の機会ととらえて、将来像を論じる重要な機会を失うことが危惧される。